食べること着ること、生きること
料理研究家の土井善晴氏が「一汁一菜でよいという提案」という本の中で
「だれもが心身ともに健康でありたいと思います。一人の力では大きなことはできませんが、
少なくとも自分を守るというのが、『一汁一菜でよいという提案』です。
うまくいけば家族、健康、美しい暮らし、心の充実、
実現するべき仕事を支える『要』になるかもしれません。
人間は食事によって生き、自然や社会、他の人々とつながってきたのです。
食事はすべてのはじまり。生きることと料理することはセットです。」と、
このように教えていただきました。
そして、そこにはいつも寄り添うように服があります。
家庭料理、とくに一汁一菜は食べ飽きないことが肝要であるように、
共にある日常着も同様であります。
定番の日常着は、家に馴染む動くインテリアでもあります。
生活の基盤となる空間は居心地が良く、それぞれの個性が自然体でいられることが大事です。
着心地が良く、動きやすく、愛着が持て、飽きがこない、そのうえ扱いやすい。
さらに外出もでき、自分の良さを引き出してくれればなお良いはずです。
家庭にあって食事は欠かしてはならない事で
「やるべきことを、やるべき時に、あたりまえにやる」。
それは特別なことではなく、それこそが「日常」であって、
生活であり、生きる基本だと思います。
「あたりまえにやる」これが身に着くとそれは特別なことではなくなってきます。
「~しなければならない」は何か辛さを伴います。
当たり前になると、それはストレスにはなりません。
そこまでルーティーンにしてしまうと、つぎに心のゆとりができます。
家族が元気でいてくれてよかった、今日も大過なく過ごせてありがたい。
感謝の心は前向きな前進の力を生みます。
この感謝の心があれば、「眼(まなこ)明るければ道にふれてみな宝なり」と言われるように、
逆境もプラスに転じていけるのではないかと思います。
何十万年という歴史の中で、人類は生きながらえること、
種を保存することが全てでしたから、
危機、危険には特に最大限の注意を払わなければなりませんでした。
当然リスクに対して敏感になります。騙されないために人を疑ったり、
危険を察知したりする防衛本能(利己の心)がなければ人類に歴史はなかったでしょう。
だから共に生き続けるためには、安心・安全の担保が必要です。
共通語を生み、規範を遵守する教育・訓練が必要になってまいります。
それが大きくは文化だと思います。
ですから絆づくりとは膨大な努力を必要とします。
本能に逆らうからです。
一方でその信頼関係づくりの努力は、取り組んだ分だけ実ってもいきます。
やはり良き個性(利他の心)も備わっているからだと思います。
「衣食住」の文化はその中から醸成され形つくられてきたものと思いたいものです。
服は人をつくると言われるように、
「衣食住」とは、良き個性を育み包むためのものであってほしい。
作り「手」と使い「手」、その「手と手の輪」の広がりが
「私らしく心地良い」暮らし方文化の醸成につながればと願っています。
土井氏は一汁一菜が日常、基本にあるから、非日常、ハレの日の喜びも
特別なものとなると考えておられます。「静と動」や「緩と急」など、
私たちはそのバランスを上手くとることによって
心豊かな日々を送ることができるように思います。
基本が身につけば応用は広がり、
経験を重ねて心のフィールドはさらに広がっていきます。
素敵なレストランで、洗練されたもてなしや料理をいただきながら、
シェフの人柄や産地に心を運ばせ「やさしい味だね」と共感しながらいただく経験は
特別な時間になります。そこには、地に足がついた基本があるからだと思います。
オルウェイズ店頭におけるお客さまの体験も同じところを目指しています。
装いの新たな知識や着方のポイントは、その方の生き方に表現力の幅、
深みを提供し、期待や幸福感を感じていただくことができます。
店での探す楽しみ、比べる時に広がる体験イメージ、いい買い物ができた喜び、・・・、
その経験がお客様の豊かな時間であり、
思い出の経験でもあることを願って私たちは取り組んでまいります。
デジタル化の流れは止まりません。それどころかさらに加速化してまいります。
何のためのデジタル化なのかを忘れ、ただそこに乗っかってしまうと、
やがて五感がにぶり人間性まで失ってしまうのではないかと危惧します。
デジタル化とは、人間性(自然の一部である実感)を深める方向にあるべきです。
その時には「デジタル」×「リアル」で新たな価値の創出もできるはずです。
私たちは生地に触り、生地の声を聞き、あるべき姿を描き、着て楽しむ、
その一連の行為が五感を磨くことであり、お客様の五感と共振することで、
これこそが人を生かす「文化の原点」ではないかと考えます。
「一汁一菜」が「一汁三菜」でもいいのですが、
身体と心の良い状態を維持するための食事は、
私たちの目指す「人に優しく地球に優しい」生活文化醸成につながります。
食材を無駄にせず、健康志向で普通に美味しい食事(特に日本料理)は、
世界の今の食文化を劇的に良い方向に変えることができます。
服もまったく同じことが言えるのではないでしょうか。
晴れの日の装いももちろん大切ですが、
日常着の定番を持つことは「私らしく心地良く」暮らしながら、
「人に優しく地球に優しい」暮らしかた文化醸成に貢献します。
大きく環境問題に取り組むことは個人にはできませんが、
「一汁一菜」も「日常着の定番」を持つことも一人からでも始められます。
私たちは人との繋がりの中でしか生きられないのであれば、
生きがいとは質の高い絆の中にあってこそ生まれてくるのではないでしょうか。
日常を丁寧に大事にする心は、人や自然を尊ぶ心に通じます。
質の高い絆、それはお互いになくてはならない存在。
お互いが良く馴染んでいる状態。
だから「私らしく」なり「心地良く」なっていくはずです。
「衣食住」の「衣」も心のゆとりを生みます。
ルーティーンは変化がないのではなく、
安定したゆとりから充実した生き方が立ち上がってくるはずです。
心が安定してくると傍(はた)も楽(らく)になります。
私たちの働(はたら)くはそこに立ちます。
日常着とは本来その使命、役割を担っているのだと思います。
生活の定番、オルウェイズ(always)の日常着は、
いつも(always)「やるべきことを、やるべき時に、あたりまえにやる」
その
傍(はた)を楽(らく)する皆様に寄り添ってまいります。
2022年1月株式会社オルウェイズ 代表
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